地質調査におけるスクリューウェイト貫入試験とは?
メリットとデメリット・調査方法を解説
スクリューウェイト貫入試験は、建築前に地盤の強さなどを調べる調査です。
どれだけ耐震構造に優れた一戸建てでも、そもそもの地盤が弱ければ地震の影響で倒壊やゆがみ、ひび割れなどの危険性が増してしまいます。
そのため、事前にスクリューウェイト貫入試験を行うことが戸建て住宅を建てる上で大切になってきます。今回の記事では、そんなスクリューウェイト貫入試験の特徴とメリット、デメリットについてご紹介していきたいと思います。
また、ボーリング調査との違いややり方もご説明しているため、参考にしてみてください。
スクリューウェイト貫入試験とは?
スクリューウェイト貫入試験の目的と、調査方法についてご紹介します。
地盤の締まり具合・硬度を確認する
スクリューウェイト貫入試験は、地盤の強度をチェックして住宅の重さによって家が傾いたり、地震による倒壊のリスクが高くないか調べたりすることが目的です。
地盤が軟弱だと建築してもその家がすぐに傾いてしまう原因になります。2000年には、「品確法(ひんかくほう)」が施行され、住宅の引き渡しから10年以内に重大な欠陥である瑕疵(かし)が見つかると、事業者による無償補修が義務付けられています。だからこそ建築前の地盤調査が一般化しています。万が一、地盤が緩く、不同沈下のリスクがあると地盤改良をする必要が出てくるのです。
建物の四隅と中央部の5箇所を調査する
スクリューウェイト貫入試験は、建物を建てる予定地の四隅とその中央部である5箇所を主に調査します。ここに専用のロッド(鉄の棒)を垂直に刺して、沈み具合を元に地盤の方さや締まり具合を判断します。
ロッドが早く沈めばそれだけ地盤が弱く、住宅の沈下リスクがあると判断でき、反対に沈みづらい場所は地盤が固いと判断できるのです。
主に戸建ての地盤調査の定番試験
スクリューウェイト貫入試験は一戸建て住宅の地盤調査において、もっともスタンダードと言えるものです。調査自体はスウェーデンで開発されたものであり、もともとは「スウェーデン式サウンディング試験」と呼ばれていましたが、2020年10月26日から試験名称がスクリューウェイト貫入試験に変わりました。
スクリューウェイト貫入試験のメリット
一戸建ての地盤調査にスクリューウェイト貫入試験が導入されている、3つのメリットをご紹介します。
汎用性が高くすぐに試験しやすい
スクリューウェイト貫入試験はシンプルな調査内容であり、作業の負担も少ないことが特徴です。特に狭い敷地でも調査しやすいため、住宅密集地の狭い敷地の地質調査も土地の制限を気にせず導入できます。
小規模な建築物向きの調査で、ほかの調査よりも比較的取り入れやすく、一戸建ての狭い敷地内でも問題なく調査できるところが特徴です。
データをそのまま現場から事務所に送付できる
スクリューウェイト貫入試験はデータを連続的に測定できるうえ、そのままファイル保存も可能です。たとえば、測定した現場からデータを事務所へと転送することもオンラインでできるため、データをとりまとめしやすいところも大きなメリットです。
最短半日程度で調査が終わる
スクリューウェイト貫入試験は最短半日程度で終了する期間の短さも特徴です。同じく地質調査で定番であるボーリング調査が、規模によっては数日間かかることもあります。しかし、スクリューウェイト貫入試験なら長期の時間が必要ではなく、簡易的な調査だからこその手軽さが魅力です。
ここで気をつけて欲しいのは、あまりに短い時間で調査を終了するような業者には注意が必要ということ。業者の中には1日に何件も工事を請け負うことで利益を得ているようなところもありますので、極端に短い調査時間を提示された場合には一度その業者を疑ってみるのも一つの手かもしれません。
スクリューウェイト貫入試験のデメリット
スクリューウェイト貫入試験は価格の手頃さや短期間でできるところなど、メリットがありますが比較的取り入れやすいからこその気を付けたいデメリットもあります。
土質採取ができない
スクリューウェイト貫入試験ではロッドを挿入して地盤の硬さをチェックする調査方法です。そのため、土質採取ができずに、概略でしか判断ができません。たとえば途中に腐葉土が混ざっていても、土かどうか判断ができないため、精度そのものはほかの調査よりも高くありません。
深度10m以上は調査できない
スクリューウェイト貫入試験は深度10m以上のところでは調査ができません。深度が深くなるほど、ロッドにかかる摩擦力が増えるため、調査データの結果が本来よりも高くなってしまうのです。
この摩擦力を加えたうえでの結果の判断がむずかしいため、10m以上の深度調査が必要な場合は、スクリューウェイト貫入試験以外の方法が推奨されています。
調査技術者によって結果に多少の差が出る
スクリューウェイト貫入試験は、調査技術者の技術と調査機そのものによっても結果に多少の個人差が出てしまいます。
あくまでも非常に詳細な地盤調査が必要というよりも、一戸建てを建築したあとの不同沈下のリスクを見るために、極端に地盤が弱くないかをチェックすることが目的なのです。
スクリューウェイト貫入試験とボーリング調査の違い
スクリューウェイト貫入試験 | ボーリング調査 | |
---|---|---|
対象建築物 | 小規模向け | 小~大規模向け |
精度 | 低い | 土質の詳細がわかる 10m以上の深度も調査可能 |
期間 | 一戸建てなら半日程度 | 調査の場によっては数日間 |
スクリューウェイト貫入試験に対して、マンションなどの大型建築物に用いられるボーリング調査は、上記のように違いがあります。ボーリング調査は土質も採取できるため、より細かい地質の状態をチェックできますがその分費用は高くなります。
また、ボーリング調査では液状化判定ができるところも、スクリューウェイト貫入試験との大きな違いです。液状化は地下水位が上昇した結果、地盤がまるで液体のように軟弱化することを指し、地震の後などに起こりやすく、家屋倒壊や損壊につながってしまう恐れがあります。ボーリング調査は地質採取によって、この液状化判定が可能です。特に深度が必要な中規模や大規模な建築では、基礎を地下奥深くまで貫通する必要があることから、液状化判定が重要視されています。
スクリューウェイト貫入試験のやり方
1.ロッドの先端にねじれた矢尻のようなスクリューポイントを取り付ける
2.地面に垂直にロッドを突き立てて重りを1枚ずつゆっくりと載せていく
3.重り1枚ごとのロッドの沈み込み具合で地盤の硬さを調べる
4.重りをすべて載せたらスクリューポイントで土を堀り25㎝貫入までにハンドルを何回回したか記録する
5.ロッドを引き抜いてコンベックスで孔の水位を計測する
スクリューウェイト貫入試験は深度10mまで行えますが、地中が締まっていると25㎝まで貫入ができないこともあります。この調査を合計5か所行い、最後に土質は「砂質土」「粘性土」「礫質土」のいずれかに分類します。
スクリューウェイト貫入試験は工務店や専門家に相談しよう
地盤調査の工法には複数の種類が存在します。スクリューウェイト貫入試験だけでも、人力式と機械式があり誰が測定するかでも精度が変わります。一戸建ての場合はスクリューウェイト貫入試験が一般的ではありますが、前もって工務店や地盤調査の専門家に相談したうえで、土地にあった工法を選ぶことが大切です。
まとめ
スクリューウェイト貫入試験は、土質が採取できないところと、10mまでの深度の調査に限定されることがデメリットではあるものの、ボーリング調査などと比較して費用をおさえられるうえ、調査時間も最短半日程度とメリットがあります。
住宅を建てる前に、地質調査をしたうえで地盤改良工事を行うケースが一般化しています。地質調査はその後の地震などの災害時や、通常生活している中での不同沈下などのリスクを事前に知るうえでとても大切です。特に土地の状態によっては、地盤改良工事をしなくとも十分な地盤の強さがあるケースも存在するので、これから一戸建ての建築を検討している方は、地質調査をどう行うのか事前に確認しておくことをおすすめします。
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